ミッドナイト・スクール
「待ちやがれ!」
後ろから冴子の大声が上がった。
 怪物と魔女が後ろの方にいる冴子を振り返った。
「いや、ただ前には気をつけなって言おうとしたのさ!」
その言葉で、二匹は前を振り向いた。
「遅いぜ! これをくらえ!」
立ち上がった和哉が、濃硫酸を二匹めがけてぶち撒けた。
「うっ!」
さすがの魔女でも、この不意をついた一撃には反応出来なかったらしい。
……しかし、濃硫酸は魔女の足を焼いただけに終わった。
「グガアアアアア!」
獣の大咆哮が体育館に響き渡った。
辺りに、肉の焼け焦げた匂いが立ち込めてきた。
「お、お前……」
信じられないような光景があった。
怪物は魔女をかばって、大量の濃硫酸を浴びたのだ。
「お前、どうして……」
足を焼かれた魔女は、這って怪物の側まで移動した。
信二も、魅奈も、和哉さえも一歩も動けずに、その場を見ていた。
「グガアア……アア、ア……」
魅奈は見た。その時の怪物の苦痛な表情とは別の、今までからは信じられない優しい目を。
……やがて、怪物の苦しそうな呼吸は静かになった。
怪物は絶命した。
体育館は再び静寂に包まれた。炎は一段と激しく燃え上がり、体育館の中はサウナ以上の温度となった。汗だくになり、肌がチリチリと焼ける。体育館内の空気も薄くなり、息苦しさが増した。
「……お前たち人間なんて下等な生物に、こんな真似が出来るか! こいつは命懸けで私の事を守ったのだぞ」
怪物は契約した女を、自分の妻を身を挺して守ったのだ。
「……おのれ。お前たち、もう生かしてはおかない!」
魔女はしゃがみ込んだ姿勢から鎌を高く掲げると、何やら呪文を唱え始めた。魔女の周りの青白い光が、鎌の先端に集まる。
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