ミッドナイト・スクール
……その頃、魅奈は保健室から生徒会室へと向かう途中だった。
「はあ、保健委員の仕事って結構多いな……あ、もうこんな時間だ。生徒会室に行かなくっちゃ」
保健室前の廊下は明かりがついていない。
教室のあるH・R棟と、連絡通路で繋がっているこの管理棟は、二階に職員室がある他は、科学実験室、地学室、生物室等、あまり授業以外では使わないせいかこの時間は人気がない。特に、魅奈のいる1階には、保健室の他には会議室と事務員室があったが、生徒も事務の人達も帰ってしまい、電気が落としてある。
「何だか……怖いな」
魅奈は怖い物が苦手だ。幽霊話ゃ、怪談等のオカルトはたまに話題にするものの、前にホラー好きの友達から強引に勧められて借りたビデオは、最初の三十分を観るので限界で、これからメインとなる時に電源を切ってしまった程である。それでも怖い物見たさからか、何度も付ける、切るを繰り返して、約九十分のビデオを五時間かかって鑑賞したのである。
「電気くらいケチらないでつけとけばいいのに」
足早に歩く魅奈は、階段の辺りに差しかかった所で不意に足を止めた。
スーッと音もなく、何かが階段を二階に向かって上がって行く。
魅奈は校舎に残っている誰かだろうと思ったが、それにしては様子が少しおかしい事に気が付いた。
「今の人……サリーみたいな民族衣装を着てたような気がする」
魅奈は、その人影が消えた二階へ続く階段を見上げてみたが、見えるのは闇ばかりで何の人影も見えなかった。
「どこ行っちゃったのかな? ……まあいっか、あーっ、いけない、もう七時だ!」
魅奈は慌てて生徒会室へと走りだした。
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