天使の羽衣
「どうして…こんなことになっちまったんだろ」ぽつりと呟く。

俺が屋上に来ようと思ったのは、ただボーっとするためだけではない。

もしかしたら、という考えがあったからだ。


――もしかしたら、ふと飛び降りる気になるかもしれない。


そうすれば、こんなクソみたいな俺自身とオサラバできるかもしれない。

もちろん、それは自殺願望なんて大それたものではなくて、現実逃避の一種みたいなものだった。

事実、屋上の手すりから遥か下の地面を見下ろすと、それはもう怖いのなんの。足がすくんで飛び降りる気なんざ、微塵たりとも思わなかったわけで。

しかしそれでも、屋上に来て得られたものは確かにあったと思う。

アパートの暗い部屋に引きこもっているよりは、少しではあるが気持ちが晴れたように感じる。

明日も来よう。

何かが変わるとは思えないけど、俺はそう決心した。

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