神々と世界の狭間で
プロローグ
その部屋は和かな日差しが差し込み、穏やかな表情をかもしだしている。

綺麗に整えられた勉強机、テーブルの上に置かれた飲みかけのコーヒー、ベッド側に畳んで置かれているパジャマ。

その部屋はいつもと何も変わらない。

ただ、持ち主がいなくなったことを除けば。

ガチャ。

静かにドアが開けられる。

入って来たのは学生服の男である。

「レラ」

男子学生はポツリと呟いたのは、この部屋の持ち主の名前であろう。

開けられたままのドアからは階下での読経の声が響いている。

男子学生の頬には涙のあとがうっすらと残っている。

和かな光が彼を包み込み、影を払って行く。

「綾（りょう）君。」

男子学生、綾の後方のドアから声がかけられた。

声をかけたのは喪服を着た60歳を過ぎた位の男である。

背中の中程まである長く伸びた真っ直ぐの白髪を後ろでたばねている。

「そろそろ出棺だ。一緒に来てやってくれんかね。」

綾は静かに頷いた。



二人が出ていった後の部屋、そこには和かな光が揺らめいている。
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