もう1人のボク
遊間の目が、僅かにつり上がった。

「陽日、俺はキミのことも気に入っているんだ。できれば傷付けたくない」

「こんなことをしといてっ、何を今更…」

「うん、そうだね。だから早く彼を出してよ」

急に恐ろしい顔付きになった遊間は、僕の上に乗りかかり、首を締め上げてきた。

「がはっ!」

「彼に会いたいんだ。会いたくて会いたくて、仕方ないんだ」

遊間の目は、苦しげに歪んでいる。

まるで恋焦がれているように…。

「彼が俺のことを知らないのが、苦痛でたまらない。会わせてくれるだけでいいんだ。キミに迷惑はかけないと誓えるよ」

「イヤっ、だ!」

それでも僕は頷かない。

「―そう。なら、仕方無いな」

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