《短編》聖なる夜に
アレ
『…今日も相変わらず、アンタの彼氏は大人気ですな。』


教室から二人で窓の外を眺める。


毎日聞き飽きたミチの言葉に、毎日飽きるほどため息ばかりをつくあたし。



「…良いんだよ。
アレとは、軽い付き合いの約束だから。」


『…“軽い付き合い”ねぇ。』



眺める窓の外の光景は、いつも大体同じようなもん。


“アレ”ことあたしの彼氏のエイジはいつも、女に囲まれながら歩いている。


まるでハーレムの中の王様気取り。


だけど気取っている訳ではなく、彼の振る舞いはいつも、本当に王様そのもの。




『―――亜紀じゃん!
何やってんの?』


下から叫ばれ、ついでに周りを囲っていた女達も一斉にあたしを見上げる。


てゆーかあたしに聞く前に、アンタこそ何をやってんだって話だ。


横目に見たミチは、笑いを堪えるのに必死そうな顔をしていた。



「別に~。」


それだけ叫び、きびすを返して窓に背を向ける。



『…逃げるの?』


背中から、ミチが声を掛ける。


その言葉に振り返り、ため息を返して声を発した。



「…あんなのと付き合ってるなんて、他の人に知られたくないし。」


『…じゃあ、付き合わなきゃ良いじゃん。』



ごもっとも。


だけどそもそも、あたしから言い出した話じゃない。


なのに付き合っていることが他の人にバレでもしたら、今流行のイジメなんてものにあいそうで。


あたしはそんな恐ろしいこと、願い下げだ。


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