命の贈り物



「う……ん……。」




ああ、温かい。

ぬくもりが、伝わってくる。




ベッドの横の椅子で、気付けば私は眠ってしまっていたのだろう。



窓の外は、暗い。




温かい、大きな手が、私の頭を撫でる。





「涼……。」




「悪かった……な。」





「ううん。私がいけないの……。涼、頑張ったね。それから……。」







それから。





「孝志も。」






「そうだな……。ありがと。」






「じゃあ、私帰るね。」





私は椅子から立ち上がる。



「早く、また一緒に学校に行こ。」





「……あぁ。」






そう言って微笑んだ涼の後ろで、孝志も笑っているかのようだった。





「また明日。」






その言葉を発することが出来る、私は幸せを感じ、部屋をあとにした。





そう、当たり前だった、明日も明後日も涼に会えるという日常がまた、当たり前へと戻っていくんだ。




だけど、その言葉は。





一つの気休めだったのかも……しれない。





二度と、会えないなんて、嫌だから……。




< 202 / 219 >

この作品をシェア

pagetop