SleepingBeauti
河内百合は、ぼくに問い掛けのこたえを待っているように、ぼくをみつめた。

ぼくもその視線から、逃れることができなかった。

それでも、ぼくは、なにもこたえることができない。

それに、河内百合が言うほどに、ぼくは、ぼくたちは、互いに心をゆるしていない。

そのことを告げようとした瞬間に、河内百合は怪訝な表情をして席をたった。

山下が視界に入ったからだった。

「後でね」そうつげると河内百合は喫煙室から出ていった。

山下と、視線をあわせようとせずに。

あそこまで人に嫌われたくないと思った。

人付合いをしないぼくには、そんなシチュエーションすら訪れないのだけど。
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