愛羅武勇×総長様Ⅰ

何を言っても聞きそうにない。

ヤバい、どうしよ…

ここまでしつこい人たちだとは思わなかったから、油断した。

ここはいつも来てるコンビニだし、今までこんな風になったことがなかったから。

「やだってば…!」

涙が溢れてきたときだった。


「離せよ。」

後ろから聞こえてきた低い声。

「その汚い手を離せっつってんだ。」


声の主の顔を見た瞬間に

「すいませんでしたっ!」

そう謝って、逃げていく不良達。

「あ、あの…ありがとうございました…」

振り返ってお礼を言った。

「どういたしまして、大丈夫だった?」

そう優しく声をかけてくれたのは、あたしの知らない人。

「あ、はい。 大丈夫です」

「君、名前は?」

「えっと、中原美憂です」

「美憂か、俺は風磨。藍沢風磨。よろしくな」

藍沢風磨……

なんか、聞いたことあるような…

……気のせいか。

「よろしく…」


年上かな…?

大人っぽいけど、優しそうな顔。

茶髪で、背が高い。

「じゃ、またね。 美憂。」

「あ、ばいばいっ!」

それだけ言うと、風磨は、歩いてどこかへ行ってしまった。

初対面なのに、助けてくれるなんて。

頭の中の半分は風磨のこと。

半分は大ちゃんのこと。
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