渇望
瑠衣とジュンを同じ秤に掛けられなくて、だからどちらか一方を選ぶことが出来ない。


求められるものが体ならば楽なのに。


ジローの車に揺られながら、ため息混じりに煙草の煙を吐き出した。



「ねぇ、アンタ前に、大切な人がいるって言ったよね?」


彼はこちらを一瞥するが、何も言わない。



「その人のこと、愛してんの?」


「愛してるのかもね。」


「じゃあ、愛って何?」


知らないけどさ、と一呼吸置いたジローは、



「極論で言うと、その人のために死ねるのか、ってことなんじゃないの?」


似合いもしない台詞に笑えた。


それにあたしは、瑠衣のために死ぬことなんて出来ないだろうから。



「バッカみたい。」


吐き捨て、煙草を消した。



「じゃあさ、アンタはその人のために死ねるんだ?」


「死ねって言われれば死ぬし、生きろって言われれば生きるよ。
望まれるなら、何だってしてあげたいから。」


ある意味ではそれは、強い意志なのかもしれない。


けれど、そんなジローが憎々しい。



「人殺しでも頼まれたらやんのかよ!」

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