渇望
「百合!」


先ほどよりずっと青ざめた顔で震えるあたしを見た瑠衣が、ほらみろ、と言わんばかりの様子で近付いて来る。


けれど、あたしの瞳に彼が映ることはない。


最後の生理は、2ヶ月も前。


元々不順だったけど、こんなにこなかったことはない。


アキトが死んだ上に瑠衣もこんな状態で、全てをストレスの所為にしていたし、それどころではなくて、忘れてた。


だから、嘘だと思いたかったのだ。





あたし、妊娠してるの?





だとするなら、仕事なんてもうずっと行ってないし、それ以前に避妊もせずに行為に及んだのなんて、彼だけだから。


瑠衣の子であることは、間違いない。







「なぁ、何かの病気とかだったらどうすんだよ。」


弾かれたように顔を上げると、瑠衣は悲しそうな目であたしを見ていた。


やっとのことで空笑いを浮かべながら立ち上がり、ちょっと横になるね、とベッドに入った。


彼はうずくまるように布団に潜ったあたしの頭を撫でてくれる。



「お前にまで死なれたら、俺もう生きてけねぇって。」


そんな、冗談にもならないことを、自嘲気味に言われてしまう始末だ。


瑠衣がこのことを知ったら、何と言うだろう。


いや、それ以前にあたしが母親になれる?


頭の中に浮かび上がるのはどれも不安ばかりで、ただ、どうすることも出来なかった。

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