渇望
生きていく道の中で、後悔しないことなんてないのかもしれない。


だってそうじゃなきゃ、きっと人は成長を望めないから。


時に償いきれぬ過ちを犯すことだってあるだろう、やりきれない想いにはばまれることだってあるし、傷を恐れて立ちすくむこともある。


けれど、生きるとはそういうことだ。


光と影はいつも隣り合わせであるように、悲しいことがあるからこそ、人は小さな喜びを大きな笑顔に出来るから。


瑠衣との再会は、初恋のほろ苦さに似ているのかもしれない。


激しくも喉が渇いて水を欲するまでに求め、その存在を望んでいた人だった。


でも、今はそうじゃない。



「百合!」


遠くから、あの人の呼ぶ声がする。



「遅いよ、ジュン!」


「馬鹿、すげぇ走ったよ、俺。
つか、早く百合の顔見たかったから、ホント急いで来た。」


「ねぇ、もう帰ろうよ。」


「そうだよな。
こんな街に長居してたら、大切なものを見失いそうだ。」


「そんな簡単に見失うものなんかいらないよ。」


あたしが笑うと、ジュンも笑った。






もう夜を恐れることはない。

だって小さな愛を知ったから。



それはひどく眩しいものだった。










END


(スピンオフ集、『渇望-gentle heart-』にて完全完結になりますので、そちらもよろしくお願いします。)
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