渇望
第二章-傷口-

痛みを重ね

街はすっかり冬の帳に支配されている。


吐き出す吐息は白くなるばかりで、ぶっちゃけ寒くてやってられない。



「おう、遅ぇぞ!」


指定された居酒屋へと、身を縮めてやってくれば、彼はそんなあたしに気付き、声を上げた。



「百合、さっさと座れっつの!」


「うっさいよ、ジュンのくせに。」


「俺のくせにとか関係ねぇだろ。」


言い合いながらあたしは、ジュンの向かいに腰を降ろした。


この時期は互いに忙しくて、だから会うのなんて本当に久しぶりだったけど。



「んじゃあ、まずは恒例のアレね!」


と、言ったジュンと、じゃんけんをした。


あたし達のルールでは、負けた方が奢るということになっているんだけど。



「うそっ、またアンタの勝ち?!」


「百合、じゃんけん弱すぎ!」


「マジ、ありえない!」


そう言いながらも、負けたあたしは口をすぼめた。


ジュンはよっしゃー、と言いながらケラケラと笑い、心底嬉しそうな顔でビールふたつを注文する。



「ちょっとちょっと、ジュンちゃん人気ホストなんだから、たまには奢りなさいよ。」


「俺は所詮、ナンバーツーだし。
だから人気のホテヘル嬢さんには負けますけどね。」


コイツめ、望んでその位置にいるくせに。


ジュンが真面目になって、本気で仕事をすれば、流星を追い抜くのだって本当は簡単なのに。


諦めるように肩をすくめるあたしを笑い、彼は「乾杯!」とグラスを当てた。

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