渇望

頼りない心

瑠衣に泣きながら好きだと告白しても、あの人が他の女を抱いていると確定されたとしても、あたし達の関係に変化はなかった。


相変わらずどちらかの部屋で、飲んだり一緒に眠ったり、というだけのことだ。


別に望んでいるわけではないが、甘い関係なんてものには一生発展しないだろうとも思う。


相手に何も求めないのが愛だ、という言葉を聞いたことがあるけれど、じゃああたしは瑠衣を愛しているということだろうか。


残念ながら、そんな難しいことはわからないけれど。






街はすっかりクリスマスムードだというのに、この部屋の窓は、やっぱり今日も開いている。


漂うのは、鼻を刺す臭い。



「香織、あたしが誰かわかる?」


「ほへぇ?」


その返事は、どう捉えれば良いのか。


香織は赤ちゃんのように、ベッドでごろごろと動いていた。


そしてドテッと床に落ち、何が面白かったのか、へらへらと笑い出してしまう始末。



「シンナー止めろって言ったのに。」


呟きは、きっと届いてさえいないだろうけど。


あたしはこめかみを押さえ、床で動く物体を足で小突いた。

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