ウソ時々ホント【短編】
「チケット取れてよかったね。結構人気なシリーズだし、前売券買っとけばよかったかなとも思ったんだけど」


学校帰り。
蒼と公佳が立ち寄ったのは映画館。
人気のある外国のファンタジー映画の新作を見る為につい先程買ったチケットを持ち、ジュースを購入しながら、蒼が喋る。

「うん。そだね」と返してから公佳が無邪気そうに続ける。

「さっき聞いたんだけど、私達でチケット売切れだったみたい。ラッキーだったね」
「マジで!?」
「ごめんうそ」
「…」

またしても騙されやや恥ずかしそうな蒼を連れて、公佳は意気揚々とシアターに入る。




…―2時間後―…

「あーよかったーっ」
「あのドラゴンのロボット凄かったねー」
「えっ!?あれCGじゃなかったの?てっきりCGだと…」
「CGだよ」
「…ロボットってのは」
「ごめんうそ」
「…」



帰りの道。
街灯の少ない道を月明かりが照らしている。
くだらないやり取りも途切れた沈黙に、互いが互いの事を想っていた。

勿論、そんな事はお互い知らない。

ポツッ…ポツッ…ザアァー…

「うおっ」
「わっ」

気持ち良いような、むず痒いような沈黙を破ったのは、にわか雨の雨音だった。
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