私の風

真夜中のサーフィン

ムカつく
ムカつく
ムカつく…!!


16年間で

こんなに朝、
サーフィン
出来なかったのは

初めての事だ。


すっきりしない。


サーフィンがしたい。


海の上を
波に遊ばれるように
走りぬけていたい。


その日
学校では
全く授業に
集中できず、

放課後の
チャイムと同時に

海へと
駆け出している
自分がいた。


サーフボードは
今朝から
海に流した
ままである。


制服を
脱ぎ捨てて

制服の下に
こっそり穿いていた
水着だけの
姿になる。


砂浜を駆け抜け

制服を投げ捨て

夕日で真っ赤に
染まった海に

思い切り

飛び込んだ。







ほっとした。



ここが俺の居場所。



落ち着きを
取り戻し、

改めて
砂浜を見ると、


脱ぎ捨てられた
制服と、

捨てられたかの
ようなバックが

海草のように
風に揺られ
うごめいていた。


「ぷっ…。焦りすぎだよなぁ…。」


自分のした事を
他人事のように
感じる。

海が恋しかった。

一秒でも早く
ここに来たかった。


「…完全に中毒だな。」


海に浮かびながら
空を見上げ、

空へとまっすぐに
伸ばした右手を
見ながら…


そう
呟いていた。
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