まほろば【古代編】
どうやら青年の体は小刻みに震えているようだった。

よく見れば、血の気の引いた青白い顔色をしている。

震える体をどうにか動かして少年の元へと近づく。

その様子を少女は冷めた目で見つめていた。

「ああ、何てことだ……」

青年は、少年の背中に刺さった矢を抜こうとして手を止めた。

そして少女のほうを振り返ると、

「何とかなりませんか?――お願いします」

大いなる悲しみを湛えた声で青年は懇願する。

その瞳からは涙がとめどなく流れ出している。
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