先生と王子様と演劇部な私。
「デコ……」


 ……? 信号待ちになると、朗先生はハンドルに上半身を預けながらこちらに顔を向けてきた。何かを呟いている。



「デコチュー……」



「――!!」


 朗先生が目を細めて、意地悪そうに微笑んだ。


 ボボボボッ!
 さっきのデコチューを思い出して真っ赤になってしまう。



「ち、違う緊張与えないで下さいよ!」


 
「緊張解いてやるつもりだったんだけどな」


 私の抗議に、朗先生はケラケラと笑った。




 おでこに意識が集中してしまう……。
 大体デコチューって色んな意味で中途半端よね。どうせなら唇にしてくれたら良いのに……って、何図々しいこと考えてるのっ。


 頭をブンブン振ると、朗先生がまた意地悪そうにクスクスと笑う。



 なんか私、デコチューされて嬉しいとか言っちゃったようなもんだけど……先生が何を思ってたか聞いてなくない?



「朗先生はずるい」



 私がそう言ったのと、朗先生が着いたぞ、と言ったのはほぼ同時だった。

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