先生と王子様と演劇部な私。
 今度はエミが呆れて立ち止まった。私はモゴモゴと口篭る。


「何か、すんなり認めていたようで、考えてなかったというか」

 朗先生が好き、とハッキリ言葉で考えないようにしていたから。


「まぁ、セーブしちゃうのは仕方ないんじゃない? うちらは生徒だし」

 エミがちょっと考えながら言った。


 そう。……そうなんだよね。朗先生は「先生」なんだ。


「でもさ」


 エミが笑う。


「後のこと考えて立ち止まってどうなるの? 今の気持ちを諦めて後悔したくないもの。月並みだけど、やらない後悔より、やって後悔を選びたいじゃん?」


 きっと、受験前に彼氏と付き合い始めた自分のことも言ってるであろうエミ。でもそのセリフで私の背中を押してくれてるんだと思う。


「うん……そうだね」


 王子様を思い続けていたはずなのに。



 もうハッキリ認めることにしよう。





 そうだね……。私はもう一度そう呟いた。
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