先生と王子様と演劇部な私。
『あ、朗が戻ってきた。あいつ気ぃ短すぎ……』

 堀木戸さんの声が途中で聞こえなくなり、またガサガサと音がする。


『ったく。……柚子? そっちは何も問題ないか?』

「はっ、はいっ、大丈夫です」


 思わずピーンと背筋を伸ばしてしまう。


『そうか。俺はこれから教室に戻るけど、何かあれば電話しろよ?』


「はい」


 そう言って電話を切った。





 ――初めて朗先生と電話したこと。


 耳元で聞こえる朗先生の声が心地よかったこと。


 朗先生の電話が思いのほか優しかったこと。




 色々なドキドキが溢れてくる。





 でも、一番大きなドキドキは……。





 ……どうやら王子様を観ることができそうなこと。



 五年間、待ちにまった王子様に会える。





 朗先生が好きなのに、王子様を観たいだなんて、いけない想いだろうか……?


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