新月の夜
り合いですか?」
「はい。…ナオキにそっくりだなぁ。」
「だろ?よく言われる。あさみは覚えていないか?出会った文化祭、私は何人でいた?」
「え…っと、ナオキさんと義人さんに…5人かな?」
「その中の一人。」
「いきなり、出会ったその瞬間に、好きです!はびっくりしたな。焦るのもわかる。聞きつけた人らが集まって来たら逃げるしかないよな。」
「……。」
「ま、ゆっくりしていって下さい。突然の同級生との再会は嬉しい事です。注文が決まりましたら右奥のボタンを押して下さい。伺います。」


戻る。絢美の両親は、

「同級生にも黙っていたのですか?」
「こんな境遇を言う事はみんなを不快にしますし、変な風に意識するのではないかと。それに、妻を受け入れない親です。ましては長男、厳しく育てられました。何一つ不自由ではなかったけれど満たされない気持ち。知っていたのは幼なじみな妻の姉の旦那くらいです。守ってくれましたし、優しく見守ってくれた。それが一番の救いでした。そして妻と出会って、それまで女性は関係ないと思っていたのに頭から離れなくなって、子供なのに、周りから茶化されてだんだん膨らむキモチ。再会して、付き合い始めて、初めてのデートをしたり、ペアリングを買ったり。妻は喜んでくれた。同じリングなんて。一緒になれたんだ。って。」

絢美の母は、

「そのリング、あさみちゃんはいつも左手の薬指にはめていました。赤ちゃんの父親からの贈り物?と聞いたら涙を浮かべて、寂しそうなカオをして、はい。と答える。いいの?薬指にリングをはめてるくらい好きな人から離れて。と聞いたら。彼が幸せならいいんです。望んでいない子供を無理強いさせるより、私は彼から授かった愛しい命を包み込みたい。この指輪、いつかこの子にあげるの。父親のイニシャルが入った指輪。父親の存在だけは忘れて欲しくないから。って答えました。ずっと愛してたわ。再会して良かったと思っています。」
「それがなければこの再会もない。次男はいませんでした。後に違うかたちで再会したとしていても。だから伝えたい。恋をしたら、前に考えれなかったように変になる。それは何一つおかしくない事。いい事ばかりではないけれど恋した方がいい。大切にしないといけない。それは未来永劫続くことだと信じています。」

和也は、

「少しずつ探し
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