足音さえ消えてゆく
 あわててリビングに駆け下りると夕食の片付けをしていた恵美があきれたような顔でこっちを見た。

「あー、やっと降りてきた」

「なんで起こしてくれないのさ」

「何言ってんの?何度も起こしたのにちっとも起きなかったじゃん」

「ええっ、全然気づかなかったよー」

 壁にある時計は、すでに夜9時を回っていた。6時間くらい寝てしまったのだろうか。


「お父さんとかお母さんは?」

 
 

「今日はデートらしいよ、映画見に行った」

 冷めてしまった夕食をレンジで温めなおしてくれながら恵美は言った。

 おかずを受け取り、寝起きの身体に流し込む。



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