足音さえ消えてゆく
 校庭ではにぎやかに男子がサッカーをしている。よくあんなに盛り上がれるもんだ、と感心すらしてしまう。

「大人になるって、めんどくさいのかな」
目でサッカーボールを追いながら、まるで独り言のようにつぶやいた。

「うん、お父さんなんて毎日遅くまで仕事してるみたいだし、大変そうだな~って思うよ。お母さんも夕方までパートで、そのあとご飯づくりだしね。そういうの間近で見ていると、私にはムリって思っちゃう」
菜穂がため息をつきながら言う。


「なんか暗い話してるなぁ」

 声に振り向くと、優斗がいつのまにかすぐ後ろにニヤニヤ笑いながら立っていた。


「なによ、盗み聞き?」

「ちゃうわい。お前のバカでかい声ならどこでも聞こえるっちゅうねん」



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