足音さえ消えてゆく
 夢と覚醒の間で、遠くから途切れることなく聞こえる雨音が耳に入ってきた。

 目を開けるとその音はますます大きくなったような気がした。

 青いカサをさしていつもの道を歩く。今日は土曜日で、半日授業なので気分もいくぶんラクだ。
 カサをさして歩く道は視野も狭く、自然にアスファルトに跳ねる雫を眺めながら歩くことになる。

 自分の足音が雨の音に消え、世界はまるで色を失ったモノトーン。

 この世にひとりっきりのような気がするのはなぜだろう。


 カサをたたみながらホームへ上がると、そこには昨日と同じく涼子の姿はなく、さすがに私は不安になってきた。

 電車が来るまでの2分間、私はいいようのない不安がおしよせてくるような感覚を味わっていた。

「きっと、試験だから早く行っている」
そういう考えも、昨日のメールの返信がまだ来ないことから、否定されたような気もする。
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