神への挑戦
「なぜだ?お前の質問に、しっかりと受け答えしていたのだろう?なら問題はないじゃないか」

刑事は、この警察署の屋上からタバコのポイ捨てという軽犯罪を行った銀次に、何も注意する事無く、銀次に問いかけた。どうやら、タバコのポイ捨ては二の次のようだ。

「あの青年は、心を壊しちゃいないが、決して無事ではないと俺は思うぜ。多分、かなり厄介な事になっている…」

「だからその根拠を教えろよっ。」

遠まわしな言い方をする銀次の態度が気に食わないのか、刑事は少し怪訝な表情をする。

銀次は、吸い終わったばかりなのに、新しいタバコを取り出すと、タバコに火を着け、その理由を話しだした…。

「アイツは、人として大切な部分が、完全に欠けていた。それは、危機察知能力だ…」

「危機察知能力?」

「あぁ。獣でも、人間でも、人として絶対に感じなくちゃいけない、『恐怖』という感情をアイツは無くしているんだ。俺が言うのもあれだが、普通の奴なら、俺の眼光を受けただけで少なくても怯んだりするんだがな…アイツは、何も感じていないようだった」

銀次の真剣な時の眼光は、ジャッジタウンの不良ですら、竦み上がる代物だ。心の底から恐怖が湧きあがり、体がどうしても硬直する。

あの、普段から面識があった、ハヤトやヒサジですら、銀次の鋭い眼光の前では、何かしらの反応を示すほどだからだ。

そしてそれは、この刑事も理解出来る事でもあった。昔、何度もその眼光を浴びてきた人間だからこそ、解る銀次の理屈。

「心ここにあらずとか、全くこちらを見向きもしないとかなら話は別だが、アイツは、俺の眼をまっすぐ受けていたのにも関わらず、何も感じていないようだった…明らかにあれは、何かが欠落している」

「…そう言う事か。ちゃんと話せるし、自分の事をしっかりと理解している青年なのに、恐怖に関してのみ、何も感じていなかった。とどのつまり…」

刑事はこの後の言葉を言うか言いまいか、悩んでいる様子だ。
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