神への挑戦
「ヒサジ…あの野郎っ」

言ったのか??まさかだろ。

「ヒサジ…君??」

「まさかアイツがこんな口が軽いとは思わなかった。黙ってろって言ったのに」

「何の話?」

「だからヒサジが言ったんだろ?プロポーズの話だよ」

ふざけやがって。俺の体が自由に動ける状態なら亡き者にしてやるところだ。

「ヒサジ君がプロポーズの話を言ったって…ヒサジ君は何も言ってないよ。ただヒサジ君はハヤトの事を信じてあげて欲しいとしか言ってないよ」

「はぁっ?だってその…じゃあ何でいきなりそんな」

頭が混乱してくているのだろう。頭を抱える様な仕草をしている。非常にハヤトらしくない行動だ。

「ねぇハヤト君…詳しく聞きたいなぁ」

らしくないハヤトの様子を見たマリコは、なぜかいつもの調子を取り戻したようだ。久しくハヤトが慌てた態度を取る所など見てないマリコは、このチャンスを逃さんとする様な印象を受ける。

完全に自爆する形になったハヤトは、かなりの深手を負ったようだった。ヒサジは何も言っていない。そしてマリコにしてもただ形だけで良いから、ハヤトの愛を受けたかっただけの話なのだ。

完全に勘違いをしたハヤトの敗北が決まった形になる。

「…ずっと前から考えていた事さ。俺もまぁ…不安がなかった訳ではないからな」

背水の陣。逃げ場がないのなら、進むしかない。

逃げるぐらいなら行ったろうやないかい。

この時ハヤトは、腹をくくった。

「人間の気持ちなんかすぐに変わるもんだろ。ジャッジタウンでも男と女が好きになったり別れたりなんて事は普通にあった。近くで一緒に暮らしている二人なのに、簡単に別れたりする光景を俺は何度も見て来たんだ。それが普通なのかもしれないけどな…」

「うん…そうだと思う」

「俺の周りには人間として大切な神経が1、2本切れた男達しかいないけど、マリコの周りには普通が出来る普通の男がいっぱい居るだろ?まぁあれだ…不安がない訳じゃねぇんだよ」

不安がない訳じゃない。言葉は遠まわしだが、ハヤトの伝えたい事はマリコにも伝わっていた。始めて漏らすのではないかと言うハヤトの本音に、マリコの内心は何とも言えない満足感を感じている。
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