神への挑戦
「でもそんな世の流れの基礎を作ったのは片桐さん…アナタだ。投げ捨てるだけなら誰にでも出来るんじゃないですか?今の話を聞く限りアナタは現実から逃げただけに聞こえますよ」

「それが事実だろう。だが私は、自分では一線から身を引いたと考えておるよ…私に代わる存在を統べてな」

話が重複している気がする。だが…。

「…ジンですか」

片桐さんが言いたい事とは多分ジンの事なのだろう。そうでないと話のつじつまが合わない。

「自分には睡蓮会の今を咎める資格がないから、ジンを通して自分のしたいことを実現しようとした。そういうことですか」

「………」

この無言は肯定と取って良いだろう。俺みたいな若造の言葉を否定することに躊躇する様な人には見えないし。

「片桐さん。アナタは卑怯ですよ。自分の手を汚すのがそんなに嫌ですか?」

「それは違う」

黙って聞いていた片桐だったが、今度はすぐさま否定の言葉を言った。

「私はジンやゲンを利用しようと考えていた訳ではない。出来れば恙無く育ってほしいと思っていた…だがそれが無理だとすぐに分かってしまったのだよ」

すでに長い時間俺と片桐さんは会話をつづけていた。外はとっくに夜の帳に包まれており、日中の蒸し暑さが嘘のようにジメジメとした湿度は感じない。

それどころかその身に感じていたのは、無菌室な匂いとは逆の自然な緑の匂いだった。まさに睡蓮会の地下の様な完全に作られた匂いとは逆の匂いだ。

「あの子達は他の子供とは何かが違った。施設に暮らしていた時に処方されたPMレインの影響だったのだろう…あの時の姿は今でも忘れられない」

眉間にしわを寄せ、そう答えた片桐は苦痛の表情を浮かべる。

「薬の効き目が切れるにつれ精神状態が不安定になっていった。それも時間が経つにつれ酷くなる。壁に頭を打ちつけ、今まで覚えたのだろう言葉を永遠に叫び続ける姿。感情のコントロールが出来きない人間の姿は見て余りあるものだったよ」
< 335 / 335 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

風に揺蕩う物語
憂作/著

総文字数/168,378

ファンタジー200ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
二つの種族が争い、そして新世界が創生された。 新世界には生命が息吹き、光と闇が共存を果たす。 創造主は新世界を見守る。 そこに生きる者には知られずにただ見守る。 それが新世界を創生した者達の約束事だからだ。 その約束事を破ろうものなら…。 新世界にいらぬ抗争が舞い起ころう。 不可侵なる聖地を汚すこと罷り間違わん事を切に願う。 更新を再開致しましたが、更新速度が少し落ちます。
【短編】バクバク『Mens企画』
憂作/著

総文字数/5,058

ホラー・オカルト15ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
何を食べようかな。 バクバク。 何を食べようかな。 ムシャムシャ。 何を食べようかな。 ゴクゴク 何を食べようなか。 ガリガリ 男性作家にスポットライトをの企画短編小説です。 お題は 『おでん』 『障子』 『乳房(または胸)』 です。 多少グロ要素があるのでお読みになる際は注意して下さい。
Leave a prove
憂作/著

総文字数/73,487

青春・友情141ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
みんなは将来の夢を持っていますか? みんなは将来やりたいことがありますか? みんなは……夢を諦めたことがありますか? みんなそれぞれ将来の夢や目標があって、それに向って頑張ったことがあるよな? そして誰しもが夢を諦めたことがあると思うんだ…。 夢を叶えられる人間何て限られている。 でも俺は、諦める側の人間にはなりたくなかったんだ。 -------------------- サッカー少年の神崎 春貴が迷いながらも夢に向って頑張る青春ストーリー。 舞台は中学校最後の夏です。 長らく本篇の更新が滞っていましたが、徐々に更新を早めていきます。 恋愛要素が強い作品になりますが、サッカーのシーンもたくさん取り入れる予定ですので、良かったら見て下さい。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop