【長編】唇に噛みついて

最愛の人 ― 零Side ―


⌒⌒Rei
\/side


今日……俺は、18歳になった。


そっと隣を見つめると、幼い寝顔で聖菜が眠っている。
その寝顔を見て、俺はフッと小さく微笑んだ。


5歳も年上なのに、全然年上に見えない。
童顔だからとか。
小さいとか、そういうんじゃなくて。


馬鹿にすると、ムキになるとことか。
意地悪すると、悲しい顔をするとことか。
すぐ顔に出て、素直に感情を露わにする。
泣きたい時に泣いて。
笑いたい時に笑って。
ムカついたら怒って。
言いたい事をはっきり言う。
そんな聖菜が子供っぽいとかじゃなくて……。
子供みたいに素直なんだ。


そんな聖菜に、俺はいつの間にか。
惹かれてた。


今まで何も考えずに、求められたらそれに答えて。
キスしたり。
セックスしたり。
いろいろしてきたけど……。
聖菜を知るたび、俺は変わっていった。


初めて話した時……。
女なんてみんな一緒だと思ってたから。


“何だか知んないけど。そうやって軽い気持ちで近づいてくる男が1番嫌いなの!!気安く触んないで!”


そう言われた時、俺の中の何かが確かに変わった音がしたんだ。
そして、あの時のビンタは酷く痛かったのを覚えてる。


2度目に会った時。
俺は2度目のビンタをされた。
俺は聖菜が忘れていったバッグを真弓さんから預かってファミレスで待ち合わせをした。
その時聖菜は言ったんだ。
平気で女にキスやエッチをする俺を、“最低”だと言った。


今までいろんな女に言われてきた。
何回、何十回言われてきた言葉。
俺には痛くも痒くなかった言葉だったけど、何故か聖菜に言われたたった1回の“最低”が俺の胸をチクリと刺した。


< 151 / 286 >

この作品をシェア

pagetop