【長編】唇に噛みついて

傍にある優しさ


⌒⌒Kiyona
\/side


長い1週間を終えて、土曜日。
あたしは何もする気になれずにベッドに寝転んだまま過ごしていた。


零には……連絡できていない。
メールも電話も。
会ってもいない。
だって……。
今零と何を話したらいいのか、分からなくて。
会っても何も言えずに終わってしまいそうで。
会ったら……この関係に終わりを告げられそうで。


怖くて、怖くて。
メールを打っても、送信できずに消去してしまう。
電話をかけようとしても、電話帳を開いては発進ボタンを押せない。
会いたいと思って零の部屋へ足を向けようとしても、怖くて進めない。


分かってる逃げてるって事くらい。
だけど、怖いの。
今回の事は謝って済む問題じゃないから。
だから……零に伝えられない。


「はぁ……」


つい最近まで、幸せだったのに。
やっぱりあたしがいけなかったのかな。
零の夢を大切にしたいって……思っちゃいけなかったのかな。


でも、あたしは。
零が大好きだから……。
今しか続かない関係じゃなくて、この先ずっと続く関係でいたかったから。
距離を置こうって決めたのに。
あたしがいいと思ってした事は……。
逆に2人が駄目になっちゃう事だったのかな。


時間が巻き戻せたら……。
やり戻したい。
全てを……。
あたしの考えが間違っていたのなら、幸せだったあの頃に戻って。
もう一度やり直したい。
あたしの願いが届くなら、時間を戻したいよ。


叶わない願いがあたしの胸を締めつける。


ねぇ……零。
ギュッと抱きしめてほしいよ。
安心させてほしいよ。
でも、それができないからこんなに苦しいんだね。


「っ……」


また、涙が出てくる。
涙って枯れないんだね。
もうすごい泣いてるのに、泣いて泣いて泣きまくってるのに。
苦しくなるだけ。悲しくなるだけ。
もうこれ以上は……って思っても、涙は止まらない。


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