【長編】唇に噛みついて


仕事を終えて、今日は飲み会も何もないあたしは1人でゆっくりと自分の部屋があるマンションへと歩いた。


最近怒ってばっかで、疲れた。
今日は早く寝よう……。


そう思った頃。
丁度マンションの前に着いた。
ゆっくりとエレベーターのボタンを押すと、ちょっと経って扉が開いた。
中に入ろうとして、顔を上げた時。


「「……あ」」


あたしは目を見開いた。
丁度エレベーターから出てこようとしてたのは、……須藤だったから。


何で!?


「何でここにいるのよ!」


あたしは須藤を指差して口をパクパクさせた。
すると須藤はニッと笑った。


「何でって……俺んちここのマンションだから」


って……。
ええぇ!?


「嘘!?」


「いや、嘘言ったってしょうがねぇだろ」


ま、そうなんですけど……。
嘘でしょ?
何でこいつと同じマンションなのよ。


もう会う事はないって思ってたから、こんな形で再会してしまって事に絶句。


てか、昨日あんな別れ方したし、気まずい。
とりあえず……早くエレベーター乗ろう。


「そうなんだ。じゃ、あたしはこれで」


そう言ってあたしは俯いてエレベーターの中に入った。
そしてボタンを押して扉を閉めようとした時だった。
須藤はいきなりエレベーターに乗り込んできて閉のボタンを押した。


「何で乗るのよ!?」


あたしを中に押し込んで壁に押し付けた須藤にあたしは目を大きくした。



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