【長編】唇に噛みついて
◆6◆

さよなら、愛しい人。 ―理人Side―


⌒⌒Rihito
\/side


どうして2人は食い違っているのか。
きーは須藤に振られたと言った。
須藤はきーに振られたと言った。
一体どっちが本当なんだ?
何でどっちも振られた側なんだ?
どっちかが振らなきゃ、成り立たないだろ?


でも……その答えをくれたのは鼎だった。



それは、須藤と話した後の事だった。


食い違う2人の言葉に訳が分からなくなって、オレは去って行く須藤の背中を黙って見つめていた。
その時……涙を流しながら言った鼎の一言。


『あたしのせいで、零と聖菜さんが……』


その言葉にオレは聞き返す。


「どういう、事……?」


鼎のせい?


また訳が分からなくてオレは眉間に皺を寄せる。
すると鼎は涙と嗚咽ですっかり話せる状態ではなくなっていた。


ここは一応、廊下な訳で……。
何人かの生徒が廊下を通り過ぎていく。
今の状況は……まずい。
オレに前で泣きじゃくる鼎。
周りから見たら、オレが泣かしているように見えるだろう。


そう思ったオレは泣いている鼎の腕を引き、口を開いた。


「とりあえず……ここから移動しよう」


オレは鼎の手を引き、近くの空き教室に入った。
そしてまだ泣いている鼎を見て眉を下げた。


これで……。
鼎の泣き顔を見るのは、2回目。
何度見ても、女の泣き顔は慣れないな……。


そう思いながらオレは近くにあった椅子を鼎の前に差し出した。


「座りなさい」


「っぅう……はっ……い」


泣きながら椅子に座る鼎を見てからオレも向い合せに椅子に座る。
そしてオレは鼎に聞く。


「鼎……自分のせいできーと須藤は別れたって言いたいのか?」




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