【長編】唇に噛みついて

花火の下で


⌒⌒Kiyona
\/side


夏。
学生は夏休みだ!!なんて浮かれている事だろうけど、社会人のあたしにはもう……夏休みはない。


「うーん……疲れたぁ」


仕事の合間、あたしは大きく伸びをして欠伸をした。
その様子を横目で見ていた真弓はため息をついた。


「確かに……疲れたわねー」


おっ。珍しく意気投合。


なんて思っていると、真弓は目を輝かせる。
それに気づいてあたしは真弓の顔を覗きこむ。


「どうかした?」


「そういえばさ、来週の土曜日!花火大会だよね?」


「へ……?」


花火大会……?
花火……大会……。


「あ!!!」


あたしは思い出して声を上げる。
するとそんなあたしを見て真弓は眉をしかめる。


「何?もしかして聖菜、忘れてたの?」


「……あはは」


はい。忘れてました。
すっかり……。


苦笑いしていると、真弓はため息をついた。


「しっかりしなさいよー。夏の風物詩なんだから」


そうですよねー。
ホントすっかり忘れてたよ。


真弓の冷たい視線から逃れる為に机に顔を伏せると、トーンの上がった真弓の声が聞こえて来る。


「今年は間島くんと行くんだー♪」


間島?
あぁ、あの高校生ね。
まだ続いてるんだ。
真弓にしては珍しいな。


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