からっぽな街
それとも、逆に、誰にも興味がないっていうことなのかな。誰にでも平等に出来るって言うことは、それは、好き嫌いなく、順位がないということでもある。
まあ、そこまで深く意味は無いか。
「はい。おまたせー。」
更衣室のカーテンを引いた中から、デニムのスカートにチェックのチュニックを合わせたハナが出てきた。
「そのチュニックかわいー。」
「うふふ。ありがとう。」
笑った丸い顔の方が、かわいかった。
「さて、シュークリームの準備完了!では、行きますか。」
「ほーい。」
 キッチンとホールに向かって、決められたあいさつをして、二人で店を出た。
外に出た瞬間、むありと立ち上る熱気。照りつける太陽。
自分の髪から体から、茹でたてのパスタとガーリックの匂いが漂う。
あちらこちらから、喧しいセミの鳴き声がする。大嫌いなセミが、今にも飛び立ちそうで、周囲を見回す。
キャンプする予定の山の中は、もっと、色んな虫がいるのだろうな。と、瞬時に浮かび、少し憂鬱な気持ちになった。
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