からっぽな街
「これね、おでが、自分で釣ったんだよ。」
1人で魚を釣れたことに自信を持ったぽくは、内臓をとるのも、塩を磨り込むのも、時間はかかったが、全て自分でやったのだ。
「すごいじゃん。ぽくー!」
「えへへ。」
プーに褒められたぽくは、本当に嬉しそうだ。眉毛を垂れさせて、満足そうに微笑む。
「プー、食べてみなよ。」
「いいの?」
私の魚を一口食べる。
「おいしー!」
「それね、俺っちが、内臓とってやったんだぜー!」
「塩を付けたのは、おでだよ。」
「はいはい。ありがとね。」
みんなが、それぞれに積極的になっていた。この喜びは、何にも変えられない。初日に比べて、どうだろう、子ども達のこの成長っぷりは。素直な笑顔、明るい笑い声には、元気をもらえる。何を食べても、いつもの百万倍おいしく感じる。
忘れていた感情が、思い出したように湧き出てくる。何をするにも、楽しくて仕方がなかった。

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