からっぽな街
「あ。飲み物、何か頼みます?」
「ああ。じゃあ、ジョッキ。」
「じゃあ、私も。カシスオレンジにしようかな。」
「あのさ。」
「え?なんですか?」
メニューから顔を上げて、山中を見る。大きな体で、真っ直ぐに私を見ている。見抜くみたいにして。
私は、恐れて、身構えてしまう。何か、言われる、と。
「あのさ。ユウちゃんってさ、頑張ってるって、言われない?」
「ええ。何がです?」
とぼけた風にして、笑顔を作ってみた。にやりとしながら煙草を吸う、山中の顔を忘れない。意外な言葉に、頭が、真っ白になってしまう。かろうじて、言葉を返したものの、ぎりぎりの状態だった。
「ああ。俺の勘違いか。」
意味有り気に、また、にやりと笑う。まるで、知っているかのように。
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