かげろうの殺しかた
いつも、秋山隼人は諦めている。


それは例えば、自分の生まれが五十石の平侍の家で、
出世したところで元の家格がこれではたかが知れていることや、

部屋住みの身で小納戸役から突然鷹匠に選ばれたものの、
自分にはどうやっても巧く仕事がこなせなかったこと──


そういったことに対して、
歯向かってみようという気が起きない。


仕方がない

自分はそんなものだ

まあいいかという気になるだけだ。


この全てに対してやる気が起きないような投げやりな気分は──

あの時から続いている。


ささやかで淡い恋心を抱いていた幼なじみの少女が、

自分には手の届かない相手だと知った時。


それは隼人が、

この世にはどんなに欲しようと手を伸ばそうと届かないものがあり、
諦めるしかないものがあるのだと

生まれて初めて知った時でもある。


それをずるずると無意識に引きずり続けるとは。


侍のくせに。

女々しいやつだな。


自分に嘲笑を浴びせて、


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