かげろうの殺しかた
放蕩馬鹿息子は本当に噂どおりに、町の怪しい連中ともつき合いがあった。


その日、円士郎がよく行くという町の居店に彼に引っ張られて行くと、

紅毛人との混血だという金の髪をした若い男が、煙管をふかして待ち構えていた。


彫りが深く色白で、異国の人の血が混じっているがゆえなのか、どこかうつつの人とはかけ離れたような
ありていに表せば、恐ろしいほどの美貌を誇る青年だった。

歳は隼人よりやや上といったところだろうか。


円士郎の友人だというが、隼人は一目でうさん臭さを感じた。


目の覚めるこがね色の髪であるとか、

摩訶不思議な緑色に光るヒスイのごとき目玉であるとか……

異国の者たちの特徴を呈している、いと珍しきこの男の容姿ではなく──


つまりはそういった、血で作られたうつわの部分ではなくて、


生まれも育ちも隼人たちと変わらぬこの国だというその男の、

生まれ育って暮らしてきた過程で作られた中身の部分から、


どう見ても極道者か何かの──剣呑な、穏やかならぬ異常さを感じ取った。

男の持つ雰囲気からは、少なくとも一般の町人とは思えなかった。
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