先生なんて言わせない

├ 素直に


走り回って、ようやく体育教官室に入っていく佐野先生の後ろ姿を見つけた。


はやる気持ちを押さえながら、ゆっくりと一段一段登っていく。



扉の前につき、ノックをしようとした瞬間、あたしは不安に襲われた。



佐野先生を信じないといけない。


だけど、あたしはまだ佐野先生を信じきれいてない気がする。



だって、あたしは佐野先生がどうしてあたしを好きなのか知らない。


あたし達が、入学式より以前にも会ったことがあるような口ぶりもされたけど、覚えていない。



だから、佐野先生にからかわれているんじゃないかって、不安になるの。



ノックをしようとする姿勢のまま固まったあたしの額には汗がにじんでいた。



どうしよう。すごく逃げ出したい。



あたしは逃げてばかりだよね。


ここでも逃げていいの?


後悔しない?

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