モノクローム
去年は嫌な事があったけど、今年は幸せな気持ちを貰ったからいいや…
ブーケを片手に街を歩き、酔っ払うサラリーマンを横目に駅を目指す。
人混みを抜けて歩きながら、肩を避けたつもりが誰かとぶつかり、ポケットに入れてた手が冷たい風に触れる。
ほぼ同時に謝って、目線を上げた時
ぼんやりと光る赤い塔が見えた。
赤い塔ではデジタル時計が12時を記そうとしていた。
あの日。
春と二人で東京タワーを見た時。
私が願った事。
もっと、一緒に居たい
記憶が溢れるように流れ、思わずタクシーを捕まえ乗り込む。
車は直ぐに渋滞にハマった。
それでも構わなかった。
やっと
やっと伝えたい事が見えて来たから…
シートに深く沈み、冷たい手をポケットに入れると指先に何かが触れる。
こんな所にまで…
私はそれを手に握りしめ、彼の顔を思い浮かべる。
すると春の匂いがした。
優しくて甘酸っぱい香りに深く呼吸をしながら、窓の外を眺めた。
そこには有名な歌詞と同じように、雨が雪に変わり、ハラハラと舞っていた。
その日の夜。
便箋を広げ、青いペンを走らせ、自分が伝えたいシンプルな気持ちを綴った。
嘘偽りのない真っさらな気持ちを…