晴れ·ドキドキ·ズッキュン
「あ、店長」

「麻美ちゃん、お疲れ」

 段ボール箱からはみ出た商品のバスタオルの山が、彼の顔を遮る。

「手伝います!」

 麻美が盛り上がった山に手を伸ばす。

「いい、いいって。もう時間も過ぎてるし」

「あっ」

 店長が避けた際に山が崩れ、廊下に落ちた。

「ご免なさい」

 麻美が急いで拾う。ふー、と彼がため息を付くのがわかった。

「麻美ちゃん、ちょっといい?」

 彼が誘ったのは、店裏の自販機だった。

 おもむろに彼がコインを入れる。麻美は近くのブロック塀に腰を下ろしていた。

「冷たいコーヒーでいいかな?」

 振り返った彼に小さくうなずくと、しばらくして紙コップを手渡される。

「あのー、先ほどはすみませんでした!」

 麻美はコーヒーに口をつける横顔に向かって、言った。

「それに、いろいろと、御免なさい!」

 色々というのは、今日、営業時間中に接客がうまくいかなかったことだった。
「いいよ。そんなに気にしなくても」

 いつの間にか、麻美の方を向いている。
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