隣の先輩
「言ってなかった? 俺、県外の大学受けるんだ。父親の実家の近くの大学。そこの天文関係の学科」

「そうなんですか?」


「そう。滑り止めは近くの大学だけど」


 でも、先輩はお父さんの実家の近くにある大学にいきたいんだろう。


 難しい大学で、名前だけは知っているところだった。


 先輩はそのために必死に勉強をしてきたんだろう。


 先輩が卒業しても隣の家に住んで、いつもその姿を見続けることができると思っていた。


 先輩の隣には先輩が卒業してもいられるんだって思っていた。


 でも、その期間は私が思っていたよりも短いことに気づいた。


 大学、か。


 先輩に近づいたと思っても、その距離はやっぱり遠かったんだ。

 私が先輩と一緒にいられるのはあと、半年なんだ。


 先輩が傍にいなくなったら、それは思い出に変わるんだろうか。


 引っ越していつしか連絡を取らなくなった友達みたいに私との約束も思い出になってしまうのかもしれない。


「じゃあさ」


 私は先輩の声に顔をあげる。
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