隣の先輩
「そんなに泣けた?」
「どうかな」
不思議そうな先輩の問いに私は肩をすくめる。
泣いたのは映画の本編じゃなくて、先輩の存在を近くで感じたから。
でも、そんな恥ずかしいし、先輩に聞かれたらドン引きされそうなことを言えるわけもない。
映画で泣いたって思ってくれているほうがいい。
「そんなにいいのかと思ったけど、やっぱりいまいち分からないかな」
「先輩らしい気はしますけどね」
やっぱり先輩のイメージは嬉々として、恋愛映画を見に行く感じじゃないから。
「お前が楽しめたみたいでよかったよ」
先輩はそんな言葉を残すと、奥にあった自動販売機まで歩いていく。
そこで先輩はウーロン茶を買ってきてくれた。
ひんやりとしていて、泣いていてちょっと火照った体に気持ちよさを感じる。