隣の先輩
 でも、やっぱりいつもみたいにあまり気にしていないような笑顔を浮かべているんだろうって思っていた。


 森谷君は教室に入ると、囁くように私に告げた。


「あの先輩も相当鈍いね」

「宮脇先輩?」

「二人とも」


 森谷君は苦笑いを浮べていた。


 私はそんな彼の表情に首をかしげることしかできなかった。


 私は席に戻る。すぐに愛理がやってきて、さっきのことには触れずに都合のいい日があったら教えてねと念入りに告げていた。


「分かった」


 もしかすると、さっきの私の行動に触れなかったのは、咲や愛理が薄々気づいていたからかもしれないと思いながらも、自分からその話題に触れることはしなかった。
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