隣の先輩
 先輩は私を家まで送ってくれた。私はマフラーを外すと、それをギュッと握り締める。


「あの、洗って返しましょうか?」

「いいよ。別に。少し雨にぬれただけだから」


 そう言って先輩は笑っていた。


 私は先輩にマフラーを返す。


 そのとき、先輩の手に触れた。


 先輩の手はさっきよりも冷たくなっていた。


 多分、雨に濡れたせいだと思う。



「あの、体」


 先輩の手が私の頭を撫でる。


「あ、ごめん」


 先輩は慌てた顔をして、手を引っ込めていた。


 それはこの前、私が手を振り払ってしまったからだろう。


「いいです。気にしないでください。嫌じゃないから」


 私はできるだけ笑顔でそう告げる。


 先輩は少し顔を赤くして、困ったような笑顔を浮べていた。


「すぐに戻るから、大丈夫。それよりもそれ、早く冷蔵庫に入れたほうがいいよ」
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