隣の先輩
 依田先輩と一緒に行ったのは赤い袴を着た巫女さんがいるお守りなどを売っているところ。


 売っている幾つかの品物に目を通そうとしたとき、真っ先に目に飛び込んできたのは受験のお守りだった。


「受験のお守りとか西原先輩にあげたら、迷惑かな」

「そうは思わないけど」

「そうですか?」

「だってそれって受かってほしいって気持ちが入っているんだろう? 嬉しいと思うよ」


 依田先輩は笑顔を浮べていた。


 依田先輩の笑顔はやっぱり可愛い。


 受かってほしいって気持ち。


 でも、それは好きと違って一人にしか向かない気持ちではない。


 いつも優しい依田先輩にも、西原先輩と同じ大学を選ぶ宮脇先輩にも通じることだった。


 私はお守りを一つ買うと、依田先輩に渡す。


「じゃあ、これは依田先輩に」

「いいよ。俺は。稜にあげなって」


 彼は不意打ちを食らったような表情をしていた。


 そこまで驚くのかと思うほど。


「今までいろいろお世話になったから、お礼の意味を込めて」

「ありがとう」


 依田先輩は少し照れたような笑みを浮べていた。


「稜にも買えば?」

「でも」

「きっと喜ぶよ」
< 543 / 671 >

この作品をシェア

pagetop