隣の先輩
 私は宮脇先輩の荷物を渡す。彼女は笑おうとしたみたいだったが、その顔は強張っていた。


「ごめんね」


 風にかき消されてしまいそうな小さな声で宮脇先輩はそう告げる。


 彼女の瞳もそれに呼応するように切なそうに見える。


「気にしないでください」


 宮脇先輩はゆっくりと息を吐く。


「大学に受かるまでには忘れないといけないと思っていたんだ。稜が私を好きになってくれないことは分かっていたから。それに依田君から聞いたけど、稜には好きな人がいるんだって」


 そのことが胸の奥をちくりと痛めた。


 本当に宮脇先輩が言ったように彼女じゃなかったんだ。


 それなのに、私はいろいろと無神経なことをしてしまったのかもしれない。


 初詣のこととか、ただ二人が一緒にいてくれればいいと思っていた。


 宮脇先輩が傷付いている可能性だってあるんだから。


「ごめんなさい」


 私の言葉に宮脇先輩は振り返る。


「どうかしたの?」


「初詣のときとか、私、宮脇先輩達がうまくいけばいいなって勝手なことをして」


 すると、宮脇先輩は冷たい手の平をそっと私の頬に当てた。


「気にしないで。稜と初詣できて、すごく嬉しかった。真由ちゃんがそんなことを考えていてくれたなんて全然気づかなかったから、嬉しいかな。ありがとう」


 今、傷ついているはずなのに、すごく優しい笑顔を浮かべていた。


 そのさっきの表情とのギャップがありすぎて、苦しい。
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