隣の先輩
 彼女のつらそうな表情が頭を過ぎる。


 外は滅多にないほどの大雪だった。外はかなり寒い。


 まだ家に帰らないということは、変なことを考えているんじゃないかとか考えてしまった。


 その気持ちを振り払うために先輩に告げた。

「私も行きます」

「いいよ。危ないから。宮脇はしっかりしているから大丈夫だとは思うし。一応、念のためだから」


 どうでもいい相手ならきっと探しにもいかないんだろう。


 先輩は宮脇先輩のことを恋人ではないにしても特別には思っているんだろう。


 悠真さんに対しても幼馴染としては好きだと言っていたから。でも、そこに恋愛感情が伴わない。それはそれで辛い気がした。


「ちゃんと家にいないとだめだからな」

「分かりました」


 先輩の言葉にあからさまに反論することができなくて、そう言うと電話を切った。


 先輩は私の気持ちに気づいたんだろう。


 宮脇先輩が帰ってきたら電話してくれると言っていた。


 私はそれから時計をじっと眺めていた。不安を紛らわそうと雑誌を見たり、本を見たりはした。


 でも、時計の音が静かな室内に響くたび、心配になってきた。


 まだ先輩から電話もかかってこない。


 時刻は九時を回っていた。
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