隣の先輩
 先輩は春休みになって、どこかに遊びに行くことはそんなにないようだった。


 たまに依田先輩や、宮脇先輩と会っていたけど、本当にそれくらいで、他の人と一緒に過ごしているのは少なくとも私は知らなかった。


「もう荷造りはしたんですか?」


「大まかなものは送ったよ。佳織と違って家探しをしなくていいのは楽だからね」


 そう言うと、先輩は笑っていた。


 宮脇先輩は一応、住む場所は決まったり、手続きなどはお兄さんがついていくらしい。


 先輩の足がとまる。そこは私が希望したお店の前だった。


「ここでいいんだっけ?」



 一応、先輩にはほしいものと、お店の名前と場所を前もって伝えておいた。


 先輩は落ち着かないのか、辺りを見渡していた。


 彼氏でもない先輩にそんなものをねだるのってどうなんだろうって思っていると、突然頬をつねられた。


「誕生日プレゼントなんだから余計なことは気にしなくていいよ。自分で買ったと思えばいいんだし」


 悪いという気持ちは消えなかったけど、先輩の優しさに甘えたくて、頷いていた。

 
 店の中はライトのせいかのか、アクセサリのせいなのか、すごくキラキラ輝いていた。そこに入るのは三度目くらい。愛理と咲が下見のときにつきあってくれたからだ。だからもう買う商品は決めてある。


 お店の中に入ると、その商品が売っているところまでいく。


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