キョウアイ―狂愛―
「よもや、屋敷を離れた理由が兄弟喧嘩だとは思わなんだ。
我はてっきり…………
しかし、早く聞いておればすぐにでもクレアを送り届けたのだがな」
アルザスのとってつけたような言い訳に
(よくも恥ずかしげもなくあからさまな嘘がつけるものだな!)
毒づきながらも、サイファの顔は綻んでいた。
―――クレアが戻ってくる
無理やりでなく
今度こそ本当に…………
その日は約束の時刻よりずいぶん早く迎えにいった。
「領主様。何から何までお世話になりました」
「気にせずともよい。
今後もそなたの兄弟とは親しくありたいからな」
礼を言うクレアを適当にあしらい、
「ところで、街の噂……聞いておるか?」
アルザスはサイファに顔を向ける。
「噂?」
「夜歩きの民をヴァンパイアが襲うという噂で持ちきりだ。
まさかとは思うが……」
アルザスの意図を読み取ったサイファは首を振る。
「我々ではない。
そちらの手を煩(わずら)わせたのは、グリーンリーフが最後。
必要ならば究明に手を貸そう」
はっきりいいきったサイファに、アルザスも確信をもった。
やはりただの噂、と。