キョウアイ―狂愛―




それは生々しく顔に現れ、人形のような無表情はたちまち感情を爆発させた。



「サイファ様はいつだってクレア様の事を、クレア様の事だけを……、お考えになっていらっしゃいましたのに、クレア様はその心を一度もお返しにならなかった!」



「……マイメイ。違う……あたし……あたしは、」


そうじゃない。

それだけが頭に響く。




「やはり、大おばさんの言った通りでしたわ。

『双子の後継ぎは厄を呼ぶ』!!」



その叫びがクレアの頭に響く。
クレアはピクリと揺れてその場に立ち尽くした。





―――もっと早く決断しておけばよかった。


私は家に遣えている訳ではないのに……。

初めてあの方にお会いした時から、

サイファ様に……、サイファ様の為だけを思い、サイファ様の為だけに生きる。

サイファ様の命(めい)など必要でないのなら無視すればよかったのだわ。


そう、もう命(めい)には従わない。




「……クレア様、以前、我らヴァンパイアの弱点お聞きになられましたわよね?」




いつの間にかマイメイの手にはキラリと光るものが握られていた。



マイメイはそのままクレアの胸に飛び込んだ。




「マ……イ…メイ」



「我らには銀の弾丸以外に、銀の短剣も有効なのです」


クレアの胸におさまったまま、マイメイは静かにそう伝えた。



クレアの腹部にじんわり

紅い染みが花のように広がってゆく。



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